「DICOM規格ってなんですか?」
意外と学校では教えてくれない、あるいはさほど詳しくやらず適当に流されるところだったりします。
今回はこのDICOM(ダイコム、と業界では発音されます)について簡単に説明します。
そもそも、DICOMとはなんの略なの?
DICOM(ダイコム)は英語の正式名称の頭文字を繋いだもので、正式には Digital Imaging and COmmunications in Medicine といいます。
……なんでコミュニケーションだけ C じゃなく CO なのか、と?
さて、何故でしょう?(笑) 発音を綺麗にするためでしょうか?(略した後の発音有りきで設定される略称ってよくありますよね。レーザーとかメーザーとか。)
ともあれ、発音はダイコムです。ここで、in Medicine のメディスンは薬のほうでなく医学・医療のほうの意味です。また、COmmunications は 〜s なので通信単体ではなく通信経路・通信システム・通信網などの意味になります。(まるで英語の講義のようですね……)
日本語で直訳すると『医療に於ける電子画像処理および通信システム』という意味になり、DICOM規格とは、まさに医療現場における医療用画像と機器間の通信のための規格であることがわかります。
具体的に、DICOM規格とはどういうものなの?
米国の放射線学会が主導で定めた国際的な医療用画像と通信のための規格で、レントゲン画像にかぎらず、医療現場で扱うあらゆるデジタル医療画像データ全般の保存形式であり、また、それらの画像を取り扱う機器のための通信プロトコルです。(プロトコル云々は、通信のための取決め、程度の意味で捉えてください。医療人は通常、ここまでは知る必要がありません。)
DICOM規格に準拠した機器ではDICOM画像が表示でき、またDICOM規格に準拠した機器同士では、DICOM画像をコピーしたり、サーバー機器のデータベースにアクセスしてDICOM画像を読み込んでクライアント機器で表示できる、ということです。(サーバーはデータ置き場、クライアントはそれを表示するビューアーのインストールされた診察室や放射線科のパソコン、ぐらいの意味で捉えておけば十分です。)
DICOMはいわゆるオブジェクト指向に基づいたデータ形式で、画像だけでなく患者の個人情報や撮影した医療機関の管理番号、撮影IDなど様々なデータを含みます。オブジェクト指向云々についても、知らなくて大丈夫です。
更にややこしい事を言いますと、プログラミングを少々嗜んでいる私の個人的見解としては、これはオブジェクト指向ではなく単なる構造体でありコンテナフォーマットに過ぎないのではないか、という気もするのですが……心の底からどうでもいいことですので気にしないでください。
今回は放射線技師の実務とは少し離れた、IT系に近いテクニカルタームが頻出していますが、必要なところだけ読んで頂くだけで十分です。また、時が過ぎてから読み直していただければ、「ああ、そういうことね……」と思っていただけることがあるかもしれない、と期待して実務では全く関係ない領域の話も織り交ぜています。
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どういう風にDICOM規格は使われてるの?
デジタルレントゲン、DR、CT、MRI、エコー等の画像撮影装置(医療現場ではこれをModality(モダリティ)と呼びます)で撮影された医療画像は、まずDICOM規格に沿ったファイル形式でそれぞれのモダリティの中のストレージ(保存領域。大抵はハードディスク)に保存されます。
次に、通常ならそれらの画像はPACS(パックス)と呼ばれる画像データベースに転送(コピー)されます。PACSについても、いつか書く時が来るかもしれませんが今回は割愛します。
これを診察室でドクターが表示して読影し、診断を行って患者に結果を伝えたり、情報提供CDとしてDICOM画像とその専用ビューアーを一緒に焼き付けたものを他院に提供したり、患者に渡したりするわけです。
DICOM画像ビューアーはどうやって使うの?
通常、情報提供CDはWindows搭載パソコンであればCDをドライブに入れると自動的にビューアーのプログラムが起動して、画面に表示される説明の通りに操作すれば画像を見ることが出来るようになっている……筈なのですが、ビューアーのメーカーによっては何故かそうなっていないものがあったり、はたまたパソコンの設定によっては自動でビューアーが起動しない設定になっていることもあり、ここが現場におけるちょっとした悩みのタネになっています……(その都度、放射線技師が「他院のCDが読み込めないからちょっと来て!」と呼ばれたりします……勘弁して欲しいです……)
ビューアーの操作方法や使い勝手についてもメーカーによって全く異なります。しかし、いちいちマニュアルを見ているほど暇でもなく、ビューアー画面のアイコンやボタンを見ながらドクターや放射線技師がフィーリングで操作するしか無いのが現実です。
まとめ
DICOMとは医療用画像と通信のための規格で、色々な医療機器で医療画像を表示したり、画像データとビューアーをCDに焼き付けて他院への診療情報提供などに役立てられています。
もしDICOM規格がなければ、医療用画像がモダリティのメーカーごとに異なってうまく表示されない……なんていうことも現実に起こりえます。
しかし、このように国際的な規格が定められたことで、モダリティのメーカーを問わず、国内外どの医療施設でも表示や機器間の通信を安全確実に行えるようになって、結果、医療業界全体だけでなく患者にとっても大きなメリットを享受できているわけです。
(ここまで読んでくださったあなたは相当勉強家ですね!)
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