MRIのT1とT2の違いは?簡単な見分け方、覚え方を紹介!

「T1強調とかT2強調とか違いはなに? 見分け方は?」

MRIで得られる画像の基本となるのがT1強調画像とT2強調画像です。

今回はそれらを骨・水・脂肪を基準に考えていきましょう。

……の前に、そもそもT1やT2ってなんなのでしょうか?

T1・T2という単語をマジックワードとして記憶してしまうと、知識のツブシが効かない(=能力の低い)技師になってしまいます。そうならないためにも、最低限は理解しておきましょう。

以下、違いを簡単に説明していきます。




T1やT2ってなんのこと? 違いは?

MRIはその原理上、RFパルスを使って人体のプロトンを操作し、プロトンから得られる情報を画像化するものです。

プロトンがいわば回転する磁石のコマのようなもので、RFパルスのオンオフによってこのコマの軸の向きが変化します。この変化量が組織によって異なる所に着目したのがT1強調画像やT2強調画像です。

もう少し敷衍(ふえん)します。

ベクトル量と時間の二軸でグラフを作り、RFパルスを切った時に戻っていく縦方向のベクトル変化を記載したものをT1曲線、横方向のベクトル変化を記載にしたものをT2曲線といいます。

組織同士の、ある時間におけるベクトル量の差が曲線の差、すなわり画像信号の差(色の差)になるわけです。

ここで重要なのは、同じ組織でも、T1とT2では信号強度が異なる点です。

組織ごとのグラフで、T1曲線における差を画像化したものがT1強調画像、T2曲線に着目して差を画像化したものがT2強調画像です。

T1強調画像

  • 骨  …… 無信号(黒)
  • 水  …… 低信号(灰)
  • 脂肪 …… 高信号(白)

T1では、RFパルスからエネルギーを得た陽子が、周囲にエネルギーを発散するスピードが、組織ごとの脂肪と水分の比率によって異なってきて、そのスピード差がベクトル量の差になって現れます。

T2強調画像

  • 骨  …… 無信号(黒)
  • 水  …… 高信号(白)
  • 脂肪 …… 低信号〜高信号(灰〜白)

T2は、組織間のT2値の差を強調しているわけですが、水はT2値が長く、実質組織ではT2値が短いため、水が高信号になるのですが、言い換えると、T2強調は組織の水分含有量の差をベースにした画像ともいえます。

おまけ:脂肪抑制

  • 脂肪 …… 低信号〜ごく低信号(灰〜黒)

T1、T2それぞれの画像に脂肪抑制を掛けて、脂肪のみを低信号にした画像を作成できます。脂肪信号を落とすことで浮かび上がる腫瘍や浮腫、出血などがありますので目的に応じて作成しましょう。



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なぜこのような差が?

では、なぜそれぞれの差がでるのでしょうか?

冒頭でも触れましたが、違いを覚えるためにはまず意味を理解しなければなりません。「T1の見分け方は、骨は黒、水は灰色、脂肪は白……」というような漠然とした暗記では意味がないのです。

それでは、組織の信号に着目して、骨・水・脂肪の順に見ていきましょう。

骨(空気)

MRIで撮像に利用するプロトンとは水素(H)原子核のこと。そして、水分(H2O)がほぼない骨はT1でもT2でも無信号(=黒)となるわけです。

同様に、空気も無信号(=黒)となります。

水は分子量が小さいため、RFパルスのエネルギーを放出しにくい特性を持っています。

このため、T1では黒く写りますし、T2では白く写ります。

脂肪

分子量とエネルギー放出のしやすさは比例関係にあります。分子量が大きいとエネルギーを放出しやすく、逆に、小さいとエネルギーを放出しにくくなるのです。

そして、脂肪は水と比べると圧倒的にプロトン密度が高い(=水素原子核が大量にある)ため、エネルギー放出してエネルギーが低くなってもなお空気や水と相対的に見るとエネルギーが高い状態にあります。

このように、脂肪は分子量が大きいためRFパルスのエネルギーを放出しやすい特性をもっているため、T1が白く写ります。

それでは、水と同じように考えて、水の反対としてT2は黒くなるのでしょうか?

ここが水と異なるところで、脂肪は(水と比べて)プロトン密度がとても高いためT2でも信号が高めで、灰色となります。

分子式は割愛しますが、脂肪は超・大量の C と O と H で構成されています。水分子なんて比較にならないほど分子量が高いです。

それゆえ、水と違ってT1でもT2でも信号を出すのです。

まとめ

分子量とプロトン密度の2つから信号を考えていくと、見分け方をスッと覚えることが出来ます。そのためにも、MRIの原理は頭のなかに定着するまで定期的に何度も流しておきましょう。

勿論、基礎がある程度わかってきたら、おそらくテキトーに読み飛ばしたであろう学生の頃の本を読み直すのも新たな発見があって良いでしょう。



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