レントゲン被曝の間隔はどれくらい?子供の場合はどうなの?

「つい先日にレントゲン検査をしたばかりだけど、被曝の影響を考えるとどれくらい間隔を開ければいいの? 子供への影響は?」

患者から質問を受ける中でも個人的経験上、堂々の1位の質問です。

実は、患者ではなく我々放射線技師の被曝のほうが累計すると桁違いに高く(原則、鉛壁のむこうに居るにも関わらず、です!)、それゆれ我々は線量計を身に着けているのですが、線量計を使った計算方法においても、一ヶ月単位・年単位の累積といった風に間隔を考慮した分析を行っています。

では、間隔を開けることでにどういった影響があるのでしょうか?




身体は被曝から毎日回復している

間隔をあけることで組織は自然修復されていきます。これは、数日単位ではなく、毎日回復している、という結果が出ています。ただし、毎日回復しているからといっても回復には個人差があり、実際に何万個の細胞が回復しました!という数字が個別に出るわけではないので、一概に何日あければよいと言えるものではありません。

ただし、そもそも、被曝を気にしなければならないのは導入部に書いたとおり、患者ではなく放射線技師のほうだったりします(苦笑)

患者が被曝や撮影間隔を気にする必要はない!?

男性の精巣への急性被曝(ここでは、同日に被爆する、ぐらいに捉えても結構です)で、150mGyで一時的不妊、3500〜6000mGyで永久不妊というデータがあります。

では、どのくらい撮影すれば150mGyも短期間に被曝するかを考えてみましょう。

胸部レントゲンで1照射で0.07mGyです。約2143回、数日間で被曝しなければなりません。しかも、精巣に直撃するわけではないので実際の被曝量は20分の1以下で計算しったとすると、4万回胸部レントゲンを撮らなければなりません。一生のうち、18歳から年に2回健康診断で胸部レントゲンを撮ったとしても100歳までに164回ですから……(苦笑)

次に、最も被曝の多い腰椎、それも腰椎側面で一回4.0mGy程度とし、腰椎側面ばかり数日間に一気に撮り続けても(どんな状況だろう……)約38枚も撮影しなければなりません。更にこれも場所が精巣直撃ではないので20分の1として760枚撮ってようやく一時不妊です。

よって、結論としては非常に乱暴ながら「普通、患者が被曝を気にする必要はないです^^」という話になります。

現実問題としては、科学の話ではなくもはやフィーリング(患者の感情)の話になってきますので、放射線技師としては「数字的に全く問題ないから!」といくら説明しても理解するしないの次元の話ではなかったりしますので、そこが難しいところかもしれません……



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レントゲン被曝の子供(小児)への影響は?

多くの臓器・器官について耐容線量は大人と変わらず、血液を含む一部の臓器が大人よりやや低い……のですが、現実には、大人と子供とで照射するエックス線量がそもそも大幅に違う(子供のほうが遥かに少ない線量で済む)ため、難しい説明を抜きにしますと『気にしなくて良い』と言っていいレベルの被曝線量になります。

大人ですら気にする必要がない線量より、更に数段低い線量で撮影することを念頭において考えていただければと思います。

尚、それでも『胎児への影響はないの?』という質問が絶えませんので念のために付記しておきます。

胎児への影響は?

胎児への被曝は2つのポイントで考えます。

1.胎児の被曝が100mGy以下であれば問題なし

100mGyから身体的な影響が出る可能性が出始める数字になります。(ちなみに、これは『必ず出る』わけではなく、確率が徐々に高まっていく、と考えてください。)

2.胎児の被曝は母体の1/20になる

放射線が胎児に直撃した場合を除き(通常、妊娠中の撮影では必ずプロテクターを着用していただきますので胎児への直撃はないと考えて良いです)、子宮内にいる胎児に近い位置への被曝は母体の20分の1まで減衰します。

例えば、母体が頭部レントゲンを撮る場合であれば胎児から大きく離れているため、実際には20分の1を超える減衰になります。(もはや、気にしなくていいレベルまで減衰している、と考えてください)

3.胎児の被曝についてまとめると……

胎児付近に母体が受けた被曝の20分の1が、同日に合計100mGyを超える状況はおよそ観念し得ないため、通常の撮影であれば気にしなくてよいと言えます。

それでも心配な方のために、上記と同じ例で考えてみましょう。

例えば、胸部レントゲンは概ね0.07mGy前後と計算しても、胎児の被曝はその20分の1になりますので0.0035mGyの被曝となります。同日に100mGy被爆しようとすると3000回の胸部レントゲン被曝を受けなければなりません。現実離れした状況です。

更に、通常のレントゲンにおいて最も被曝量が高い腰椎の側面で4.0mGy(正面だと1.5mGy)として、この20分の1ですから胎児被曝は0.2mGyになります。通常、腰椎は正面+側面や、正面+斜位2枚+側面等で撮りますが、後者の例(4方向撮影)でも8.5mGyの20分の1で0.425mGyの胎児被曝になります。

母体の手足の撮影などに付いては言うに及ばず、胸部どころか、腰椎ですら胎児への影響がないと考えて差し支えないほどの微量の被曝であることが分かっていただけたでしょうか?^^

まとめ

以上により、「間隔をどのくらいあければいいのか?」という質問への答えは「あける必要がない」「気にする必要はない」が答えになります。

唯一の例外は癌の放射線治療を受けておられる患者についてですが、そういう特殊事例については当然ですが綿密な計算と分割照射を行いますので、これまた、普通の患者が心配することではありません。

テレビや新聞などの、データに基づかないいい加減で無責任な報道など相手にせず、安心してレントゲン検査を受けていただければと思います。



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