「結局、MRIってどういう原理で動いてるの? 簡単に教えて!」
基本的に物理学の塊である医療機器ですが、MRIはそのなかでも飛び抜けて特殊な技術が使われています。
そのお値段、(定価に意味は無いので納入価格で)最低でもほぼ1億円。高いですね!(汗)
今回は、そんなべらぼうに高いMRIの基礎を分かりやすい形で簡単に説明していきましょう。
本来的には高度な物理学の話になりますが、まあそれは学校で一通り学んだことと思いますし、おそらく、十中八九、わけがわからなかった事であろうと思います。普通、わかりません(苦笑)
私自身、MRIの解説本の基礎部分を数冊読んでようやくわかりました。わかると非常に簡単です。なので、同じように、ごく簡単に説明します。実務で大切なことだけ知っておけば良いでしょう。
MRIとは?
MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)とは、ものすごく大雑把な説明でいうと、常識はずれの異常なほど強力な磁場を発生・制御する装置に患者が入り、磁気の力を利用して内臓や血管・組織を撮像する検査です。
まだ意味が全くわからないと思いますが、ここでのポイントは2つ。
- どうやって磁場を発生させているのか
- なぜ磁気の力によって画像が得られるのか
これを念頭に置きながら見ていきましょう。
磁場を発生させる原理
MRIには超伝導電磁石型のMRIと、永久磁石を利用した(一般に)オープン型MRIがあります。
永久磁石型
永久磁石型はその名の通り、永久磁石を使って磁場を発生させます。
超伝導電磁石型と違って冷凍機やヘリウム補充が不要、磁場が一般的に低いため騒音が少なく、漏洩磁場も少ないというメリットがあります。
もちろん、オープン型に出来ることもメリットです。ただし、低磁場のため検査によっては診断能に限度があり、一般的にみて画像品質では超伝導電磁石型に大きく劣るものであります。
検査目的による適材適所で使い分けるものでしょうが、概ね、超伝導電磁石型が主流であると考えておけば良いでしょう。閉所恐怖症の人などでどうしてもオープン型でないと難しいというケースなどで利用されています。
超電導磁石型
そして、超伝導電磁石型ですが、超伝導体を使った電磁石……といってもわけがわからないと思いますが、それを説明するにもおそらく訳がわからない用語の応酬となるため、原理を簡単に分かりやすい表現に直すと、超伝導現象を利用して電気抵抗や発熱の問題をクリアした状態で超強力な磁力を発生させることが出来るものです。
そして、実際に電流を流す超伝導体を超伝導状態で維持するために液体ヘリウムを利用しています。(よって、冷凍機やヘリウム補充が必要になります)
また、超強力な磁場を発生させるベースとなる超伝導体そのものが磁場に弱いというまるで冗談のような特性を持っているため、第二種超伝導体というそれなりに磁場に強いものを利用していますが、これとて限度を超えると超伝導状態が一瞬で滅失します。
もちろん、医療現場で使われているMRIでそこまで磁場を上げることはありませんし、技師側で磁場の調整を行うこともありませんから完全な余談ではありますが、「どれだけでも磁場強度あげられないの?」という素朴な疑問を毎年新人から問われるので、このあたりのことを簡単に説明してます。
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なぜ磁気の力で画像が得られるのか
以上のように、MRIでは強力な磁場が常に発生しています。特に、超電導型では超電導を維持しなければならないため、MRIのコンソールをシャットダウンしようが本体では24時間常に磁場が発生しています。
生体内の水素原子核(プロトン:プラスの荷電を持っています)は、イメージするに、通常はおのおのが好きな方向に軸を向けて回る『プラスの荷電を持ったコマ』のように存在しています。また、このコマはコケることはありませんが軸は少しブレた状態――いわば、クビ振り運動で回っているとイメージすると簡単で良いでしょう。(これを歳差運動といいます)
MRIは前記のとおりの原理で、強大な磁場を帯びたいわば巨大な磁石のようなものです。MRIのガントリー内に入ると、強大な磁場によってプロトンのコマが、軸が磁場と平行方向にビシっと揃います。ただし、その回転はマチマチにブレたままで、周期までは揃いません。(位相が揃っていない、といいいます)
ここにRFパルス(ラジオ波)を書けると、磁場に垂直方向(前記状態からすると90度倒れた方向)にコマが傾き、更に回る際の軸のブレまでが全てキッチリと揃います。(位相が揃います)
そして、RFパルスを切ると、プロトンは元通り、磁場に並行になり位相がバラバラの状態に戻ります。この、戻る時にプロトンから発せられる信号を受信機で読み取るわけです。また、戻る速さは組織ごとに異なり、これがそのまま信号差の基礎になります。
騒音の原因はRFパルスのオン・オフ
MRIは独特の音がします。太鼓を叩いているようなくぐもったトコトコ・ドコドコ・時にはガァーガァー……そういった騒音がする原因が、RFパルスのオンオフによるものです。機器内部のコイルが磁場変化によって伸縮して、その時に騒音を立てているのです。
おまけ:MRIとCTとの違い
どちらも人体の輪切り(断層像)を得られることには変わりがなく、患者の中には違いがわからない人も多数おられます。
上記の通り、原理からして全く違うわけですから、患者への説明としては質問の意図に応じた『被曝の有無』『検査時間(およびMRIの騒音や閉塞した環境)』『撮影用件』『見えるものの違い』といった実質的な説明が求められるでしょう。
以上。
MRIの基礎原理を簡単かつ分かりやすい説明を心がけてみましたが、いかがでしたか?
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