「CTで造影剤を打つと言われ、検査前の食事制限(絶食)が出されました。何故ですか?」
そういう大切な事を、なんでドクターが診察室でちゃんと患者に説明しないんだ……?という職務上の不備の存在を若干感じつつも、ご説明させて頂きます。
造影検査と食事制限の関係
難しい話ではないのですが、大きく分けて二つの理由があります。
1.嘔吐の際のリスク低減
造影剤の使用において、副作用が出ることがよくあります。(発現率3%)
この副作用は各症状につき個人差が大きいため、割とよく「かゆい」とか「じんましんが出る」などの症状を訴える方がおられます。(命に別状はありません。ありふれた副作用です。)
ただ、このよくある副作用の中で一番困るのが吐き気と、吐き気を通り越して本当に嘔吐してしまうケースです。検査中に!
CTは通常、仰向けで検査しますので、そのまま嘔吐するとどうなるか……を詳細に説明するとアレですので控えますが、このとき、朝食や昼食を食べてそれが胃の中に残存していると、嘔吐物が気管に入るリスクが大幅に高まります。
この点、胃が空っぽであれば上記のリスクが大幅に低減されるわけです。
2.腹部CTと胆嚢の描出との関係
腹部CTでは、食後だと胆嚢が消化液である胆汁を十二指腸に排出してしまい、中身が空っぽになった胆嚢が収縮してしまうため読影しづらくなるのです。胆汁が満ちている状態がベストなのです。
3.未消化物の読影への影響
胃腸内に未消化物があると読影の妨げになることもあります。
とは言え、上記1・2の積極的な理由と比べるとこちらは消極的な理由ではあります。なぜなら、当日の朝から絶食したところで、大腸内が空っぽになっているわけではないからです。
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ヨード造影剤との併用禁忌薬剤
以下の薬剤を服用中の方は、医師に申し出て指示に従い、一時的に服用を中断して安全を確保した上で造影検査に臨んでください。
1.βブロッカー(交感神経β受容体遮断薬)
交感神経β受容体遮断薬は、降圧剤や狭心症予防薬、不整脈対策など、心疾患を持つ人を対象に処方される薬です。
ヨード造影剤との併用が禁忌で、もし造影剤でアナフィラキシーショックという重大な副作用(1万人に4人の低確率です)が生じた場合、アナフィラキシー反応対策に緊急投与される副腎髄質ホルモンたるエピネフリン(アドレナリン、スプラレニン……どれも外国語で副腎という意味です)の効果を減退させるリスクがあります。
要するに、アナフィラキシーショックからの死亡率を高めてしまいます。
2.ビグアナイド系糖尿病薬
ビグアナイド系の糖尿病薬と造影剤(ヨード造影剤)とは併用禁忌とされています。
乳酸アシドーシスという死亡リスクの高い症状が発現するリスクがあります。
3.腎毒性のある薬
抗菌薬をはじめ、腎毒性のある薬剤とヨード造影剤を併用すると、造影剤腎症の発症リスクを高めます。
まとめ
これから造影CT検査を受ける方は、食事制限や糖尿病薬、禁忌薬剤といった上記の大切な項目を今一度確認して、飲んでいる薬については全て、サプリメントも含めて医師に申告したうえで判断を仰いでください。
繰り返しますが、素人考え・自己判断は命取りです。
気をつけましょう!
おまけ:これからCT検査を担当する放射線技師へ
見知らぬ他人である私が言うのもナニですし、職場の上司からも説明と訓練は当然に受けているとは思いますが老婆心から。
上記内容は、患者から質問をされた時にきちんと説明できるようになっておきましょう。基本です。
そして、検査直前に改めてチェックシートを併用して口頭でも毎回確認するようにしましょう。
安全性が確保されていない状況で、医師の確認なく技師の自己判断で検査に及んではいけません。
重過失ある愚か者を、病院も技師長も法律も、守ってやる価値などないからです。
患者の命を守るためにも、自分の身を守るためにも、守らなければならない手順は欠かさず守りましょう。
また、我々は医師や薬剤師ではありません。患者の飲んでいる薬が造影検査における併用禁忌か不明な場合についての判断は、改めて医師・薬剤師に確認しましょう。
造影検査は患者の命の危険が伴う検査です。上記のルールを守った上でなお、日常的に副作用が起きます。(3%というのは思った以上に多い数字です。一日何人撮影するのか考えれば明白です)
そして、1万人に4人というアナフィラキシーショックにしても、長い技師人生、何度も出くわします。
その時にきちんと対応できるように普段からトレーニングしておきましょう。1秒の判断の遅れが、患者の生還率を減退させます。貴方の行動に、患者の命は排他的・具体的に依存しているのです。貴方が患者を守るしか無いのです。
以上。
お互い、頑張りましょう。
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