MRIでタトゥー(刺青)は大丈夫ではなく禁止!理由は火傷や変色の可能性があるから!

「MRIでタトゥー(刺青)は禁止なの? 大丈夫じゃない理由は?」

ネットでは「うちのタトゥー(刺青)は実際にMRI撮ったけど大丈夫だった!」とか「オペで体内にクリップを入れている人でもMRI撮ってるんだから大丈夫!」と言った事を書いているサイトが存在しているようです。

一方、タトゥーをしていた部位が火傷をしたり変色したりするのでダメだと一般的に言われていますが実際のところどうなのでしょうか?

実際、「色素に鉱物を使わないから大丈夫!」と主張する患者もいるのですが、私の職場ではノータイムで完全NGを出すように指導しています。

今回は、タトゥーでMRIが撮れないことについてのお話です。




そもそも、MRIでタトゥーが禁止されている理由は?

MRIは常識の範囲を超える異常なほど強力な磁場が発生します。何キロあろうと、磁性体であれば引き寄せて宙を飛び、ミサイル効果でもってガントリーに向けて突っ込んできます。

もし患者がガントリーの中にいたら、手足がミンチになる可能性も十分にあります。

そして、磁場によるもう一つの影響が、磁性体が熱を帯びる点にあります。これにより、タトゥーの中に含まれる磁性体成分が発熱し、火傷・皮膚の変色を発生させるとされています。

また、タトゥーの磁性体成分の影響で周辺の画像が大きく乱れるというデメリットも有ります。(ただし、後述しますが撮影部位とタトゥーの場所によるでしょう)

こういった影響を防ぐため、特に火傷・変色といった被験者への重大な影響を避けるためにほとんどの病院でタトゥーがある患者へのMRIが禁止されているわけです。

実際に事故があったの?

肝心の事故について、昔に実際に火傷があったということが語り継がれていますが、具体的な事例を私は知りません。

また、『どのような事故が起こっても最悪、死亡してもそれについて病院や医療機器メーカーに対する訴訟を起こしません』といった旨の誓約書を書いた上で、タトゥーのある人にMRI検査を行ったケースがあるようですが、実際には火傷にまでは至らなかったようです。(とくに変色についても触れられていません)

じゃあ、大丈夫じゃないの?

個人的には、部位(例えば、腹部を撮るときに、両手バンザイの状態で上腕にタトゥー)や、タトゥーのサイズによっては大丈夫だと思います。

実際、誓約書を書いて試している人の話も知っています。

しかし。

本当の本当の本当に、大丈夫ですか?

なにを根拠に大丈夫だって言えるんですか?

……はい。

ここからが当エントリーの本質です。

たかがイチ放射線技師の私が個人的に大丈夫だと思うことと、医療機関としてOKが出せるか、という話は全く別次元のレベルです。

これをまず意識してください。

これは、非磁性体タトゥーであっても同様です。



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えっ、非磁性体タトゥーでもダメなの!?

当然、物理的な観点から言うと、磁性体ではないのですから、大丈夫です。

しかし、現実的な観点から言うと、タトゥーが入っているという時点でダメです。

なんで!?となるのは当然ですが、もう少し読み続けてください。

医療機関側にとっては、非磁性体であるかどうかの確証がありません。

また、タトゥー業者が何かの勘違いをして磁性体のインクを利用している、更には、タトゥー業者が、非磁性体インクだと騙されて仕入れた磁性体のインクを利用している可能性すら否定できません。

そんなことは絶対にない!なんて、絶対に言えません。

インク業者すら何かのミスで間違えて磁性体のインクを納品してしまっている可能性すらあるのです。

誰が責任をとるのか?

考えてみてください。もし、患者の言うことを信じて検査をして、実は磁性体が入っており結果として大火傷や変色を起こしてしまった場合に、誰が責任を取るのでしょうか?

誓約書を書かせようと、事故が発生したらヘタすると新聞沙汰になり病院は大きな損害を負います。そうでなくても最近はネットやSNSであっと言う間に噂が広まります。

また、誓約書があろうと、実際に検査をして損害が発生した場合、病院側にも一定の責任を負わされるのは間違いありません。被害者側の弁護士は必ず「そのような一方的に患者に不利な契約は信義則に照らして無効だ!」と主張するでしょう。

それゆえ、『大丈夫です!』と言い切れるだけのものがない以上、医療機関としてOKを出すことができないのが実情です。

我々のような現場の医療人は、研究者でもなければ挑戦者でもなく、イチ末端科学者でなければなりません。ゆえに、エビデンスがそれを許さないのであれば、それは、やってはならないことなのです。

医療機関が負うべきリスクは、法的には『適切な説明と、患者の同意に基づいた、正当な業務行為であること』が前提です。

ですので、『たぶん大丈夫だと思う』では検査ができない。

そして、ガイドラインとして、タトゥーのある患者へのMRIは禁忌であるとされています。

だから、ダメなのです。

それ以上の理由は存在しないとすら言って良いでしょう。

ですので、

「隣の病院でやったから大丈夫だった!だからここでもやってくれ!」

無理です。絶対ダメです。

「◯◯さんが大丈夫っていってるからやってくれ!」

無理です。絶対ダメです。

という対応になってしまうわけです。

どうしても強いMRI検査の必要があり、やむを得ず同意書・誓約書を取って検査をすることがあるかもしれませんが、それは非常手段・極めて例外的なことであって、原則としてはMRI検査無しで診断や治療を進めていくのが通常でしょう。

まとめ

  • MRIでタトゥーは禁止
  • 理由はインクの金属成分が磁場で熱を持ち火傷・皮膚変色をこすから
  • 非磁性体でもほとんどの医療機関はノーというはず

ということになります。

今後、エビデンスが取れればタトゥーのある患者に対してもMRIの適用が出来る時代が来るかもしれません。しかし、それは今すぐではないでしょう。

早くそのような時代が来ることを願っています。



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